相続で子どもがいない場合の相続
子どもがいない夫婦の場合、一方が亡くなったとしたら、どのような財産分与がなされるのでしょうか。残された一方は、「ずっと何十年も夫婦だけで暮らしてきたし、親類とも全く連絡をしていない」として財産を相続できるのは自分だけであると考えてしまうかもしれません。しかし、民法では相続人の範囲をもう少し広く定めています。実際に誰が相続人になり得るのか、詳しく見ていきましょう。
1. 相続人の範囲はどこまで?
配偶者は、相続欠格に該当したり、家庭裁判所で相続廃除の審判を受けたりしない限り、常に相続人になります。
その他に相続人になるケースが、下記の3つになります。それぞれ順位が付けられており、第1順位が1人でもいれば、第2順位以下は相続人とはならず、第1順位の者がいなければ第2順位が相続人になり、第3順位は相続人とはなりません。
1-1 子(第1順位)
子どもがいる場合は、配偶者と子どもが相続します。養子も実子も同じく相続します。また、法律上の夫婦でない間で生まれたこども(嫡出子)も同じく相続することができます。
1-2 直系尊属(第2順位)
子どもがいない場合、配偶者と直系尊属が相続します。父母か、父母がいなければ祖父母が直系尊属として相続します。
1-3 兄弟姉妹(第3順位)
子供も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続します。兄弟姉妹が数人いても、すべて等しい割合で相続します。父母の一方のみを被相続人と同じくする場合は、相続分が少なくなります。
2. 相続人が行方不明の場合
相続すべき人が行方不明の場合、次の2つの方法で対処します。
1つは、相続財産を管理する「相続財産法人」を成立させる方法です。家庭裁判所が選任した財産管理人が、相続人を捜索し、相続財産の管理を行います。縁者が見つからない場合は、管理されていた相続財産は国庫に帰属します。
もう1つは、7年以上失踪している場合、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てます。失踪宣は行方不明者を死亡したとみなし、法律関係を確定させることが可能になります。
3. 有効なのは遺言を残すこと
国庫に財産が帰属してしまう場合や、あまり関わってこなかった親類に財産を残すことを避けたい方は、遺言を残すことをおすすめします。特に公正証書役場で作成する公正証書遺言は専門家が作成するのでおすすめできます。遺言書で被相続人の意志を反映した相続分を明記しましょう。被相続人の兄弟姉妹は遺留分を請求する権利がありませんので、意志が反映した相続ができる可能性が高くなります。
4. まとめ
子どもがいない場合、思わぬ人が相続人となり、交流が無かった分、遺産分割協議で揉めてしまうこともあります。そういう場合、配偶者に先立たれ、精神的にダメージを受けている人が対応していくには大変な負担になってしまいます。そうならないように、あらかじめ遺言書を作成して、本当に自身の財産を継いでほしい人に残せるように準備をしておきましょう。