相続発生時に覚えておきたい時効の効果
財産分与を受けた相続人は、相続税を支払う義務が発生します。しかし、相続税は現金で一括納付が基本になるため、現金の用意に悩んでしまう方もおられるでしょう。そんな中で相続税は時効が来ると支払い義務が消滅するという事を知れば、「支払わずに逃げ切れないだろうか…」と考えてしまうかもしれません。この考えの危うさと、もう一つの「遺留分減殺請求件」という、こちらも時効が重要になる権利についてご説明します。
1. 遺留分減殺請求権で正当な権利を主張する
相続人に必ず残さなければならない相続財産の割合を「遺留分」といいます。この割合を侵害する贈与や遺贈があればそれを否認する手段が認められており、これを「遺留分減殺請求権」といいます。この権利は、相続が開始し、減殺すべき遺贈または贈与のあったことを知った時から1年、また相続開始の時から10年を経過すると時効により消滅してしまい、以降は遺留分の主張ができなくなってしまいます。特に1年というのはあっという間ですので、権利が消滅しないうちに遺留分減殺請求権を行使して、相続分を主張するようにしましょう。
2. 相続税を時効で免れることはできる?
ここからは相続税を時効まで支払わずに過ごせるかということについてご説明します。相続税は、相続が発生してから5年間、支払いの義務があることを知っていた場合は7年間、税務署から請求されないまま支払うことがなければ時効の効果で相続税の支払い義務が消滅するというものです。
そのため、対策を立てて逃げ切ることも考えられそうですが、実際には税務署も相続に伴う資産の移動を詳細に把握しており、この時効制度を実際に使うのは難しいと言わざるを得ません。
何より、相続税逃れをしようとしたときに発生するペナルティーが重すぎるという現実があります。
相続税に関するペナルティーについて、主な3つ
2-1延滞税
期限に遅れて納税した場合、年7.3%と特例基準割合+1%のいずれか低い割合が延滞税となって相続人に課せられます。2カ月を過ぎる場合の延滞はさらに加算されることになります。
2-2無申告加算税
申告期限を過ぎて申告書を提出した場合、自主的に提出したときは税金総額の5%(申告が申告期限から2週間以内であれば0%)、税務調査で発覚して申告したときは税金総額15%(納付税額が50万円を超える部分に対しては20%)が課せられます。
2-3重加算税
申告書を提出しても財産を隠したり、証拠書類を偽装したりした場合は追加納付した税金の35%、申告書を提出した場合は税金総額40%が課されます。
まとめ
時効制度は、本来主張することが可能な権利や義務を発生させたり、消滅させたりする効果があります。ただ、法律にのっとり正しく利用する事が必要です。
余計な課税負担を避けるためにも、期限内までに必要な手続きを進めるようにしましょう。