遺留分は放棄できる?相続放棄とは何が違うのか?
遺留分制度が、遺産に対する法定相続人の権利を保証した、重要度の高い制度であることは疑いようがありません。
ところが、相続人の中には被相続人の意思を尊重し、「遺留分を放棄したい」という方もいるでしょう。また、遺留分の放棄を行う代わりに金銭的な対価を受け、早々に家庭問題から下りる方も。
ただし、遺留分の放棄は相続放棄とはやや異なる扱いを受けるため、制度を利用する前に両者の違いを把握することが大切です。
遺留分とは、被相続人が遺言等によって法定相続人以外の人に財産を遺した場合において、法定相続人 が一定の財産を保有することを認めた制度です。
遺言の内容に関わらず適用される点が特徴で、「遺言重視」の日本においてバランサー的な役割を果たしています。
遺留分は放棄できる
遺留分は放棄することが可能です。遺留分を必要としない場合はその旨意思表示を行うことで、遺留分を放棄して被相続人の意思に沿った相続を実現することができます。
ところで、これとよく似た制度に相続の放棄が存在します。
相続の放棄も自身の取り分を放棄することに繋がるため、「わざわざ遺留分だけを放棄する制度を作る必要がわからない」という方もいるのではないでしょうか。
なお、遺留分は一度放棄すると撤回することができません。制度利用の際は覚えておきましょう。
遺留分は事前放棄が可能!
相続放棄と遺留分放棄の最大の違いは、「事前放棄の扱いの違い」です。
相続放棄は原則として事前に放棄することが認められませんが、遺留分の放棄は事前に裁判所の許可を受けることで、その権利を喪失させることができます。
実際に遺留分の事前放棄が活きてくる状況は限定的ですが、家族関係の問題解決に向かって、しばしば用いられるケースも。
〇 既に被相続人から十分な恩恵を受けた
〇 遺留分を放棄する対価として見返りを受ける
〇 生前のうちに被相続人との関係を希薄にしたい
このような状況では遺留分の放棄が妥当かもしれません。その意味では、遺留分放棄は有用だと言えるでしょう。
相続放棄には繋がらない
誤解されやすいポイントですが、遺留分を放棄しても相続分を放棄したことにはなりません。
つまり、被相続人との協議により遺留分を放棄したからといって、通常の相続争いから下りたことにはなりません。
遺言が無く法定相続による遺産協議が始まった場合は、規定通りの遺贈を受けることが可能です。