相談前に再確認!遺言書の効力と財産分与の関係を総まとめ
被相続人の手により作られた遺言書は、まさに「相続人の運命」を決める書類です。
「愛人に全財産を譲る」
など、映画やドラマに出てきそうなショッキングな内容であっても、「原則として」遺言の内容が適用されます。
今回は、そんな遺言書と財産分与をテーマに、これまでのコラムでお伝えしてきたことを総まとめ! 専門機関への相談を前に基礎知識を確認しておきましょう。
遺言書は法定相続に優先する
日本の法制度では「遺言書は法定相続に優先」します。
つまり、配偶者や子など関係的に近い人物でも、遺言の内容によっては相続できない可能性も。遺言は財産分与の割合や対象財産の指定も行えるため、本当に「内容次第」となるのが実情です。
財産分与の方式
〇 相続分の指定 … 「長男に3/4、次男に1/4」など
〇 分与財産の指定 … 「土地建物は長男が相続、現金は次男が相続」など
〇 財産分与からの排除 … 「長男は相続から排除する」など
財産分与でモメることも
よく「円満相続のためには遺言が必要」と言いますよね。ところが、実際は遺言を残せば全て上手くいくとは限りません。
例えば、相続財産に評価の難しい財産(例:不動産)などが含まれている場合、遺言の内容と財産分与時の評価額を巡って様々なトラブルが発生します。
実際にモデルケースを見てみましょう。
例:遺言に「長男に3/4、次男に1/4」と記載した
このように相続分を指定した場合、現金であれば、長男が3000万円、次男が1000万円とキレイに分けることが可能です。
ところが不動産の場合、「評価額」を巡って争いが起きます。相続分は全体の財産を合算して具体的な金額を盛り込むので、
〇 不動産の評価額が高いか低いか
で、双方の実質的な相続額が変動します。自宅を相続する側にとっては、評価額が低い方が他の財産を多く手にすることが可能です。
遺留分の侵害でモメる
残された遺言が遺留分を侵害していると認められた場合、遺言は記載内容そのままに反映することができません。
「土地建物は長男が相続、現金は次男が相続」と遺言に記載した場合を想定して考えてみましょう。
土地や建物が極端安く、現金が莫大な金額となる場合、遺言は意図せずして「長男の遺留分を侵害していた」と見なされてしまいます。
このような形で遺留分の侵害が認められた場合、被相続人の意図通りに財産分与は行われず、不均衡を是正する形で相続が行われる可能性も。
また、先ほど取りあげた例のように、不動産の評価額を巡って更なる争いに発展するかもしれません。
遺言により財産分与を図るときは、これら遺言と財産分与の性質を見極め、後世に正しく引き継がれるように記載すべきだと言えるでしょう。