成年後見人は遺言することができる?代理は可能?
成年後見人制度は、被後見人の財産を守る大切な制度です。
この制度はサポートを必要とする人の程度によって、以下の3段階に分類されます。
〇 成年被後見人
〇 成年被保佐人
〇 成年被補助人
上記は、いずれの場合も「意思能力」に難があるところが共通点です。
ところでこの意思能力、「相続や遺言についてどのように扱われるのか?」気になっている方も多いのではないでしょうか。
被後見人は性質上、総じて高齢者がメイン。相続や遺言と無縁ということはあり得ません。
そこで今回は、成年後見制度を巡る遺言や相続に対する扱いをご紹介。それぞれの考え方や解決方法を解説しようと思います。
成年被後見人は遺言を残すことができるのか?
ある人物が法律行為を成す場合、ほぼ全ての場合で「事理弁識能力」が求められます。
この事理弁識能力は言わば「自身の行為に対する理解力」。つまり、意思能力が欠けた常態にある成年被後見人は、そのままでは遺言を残すことができません。
判断能力の欠けている人が、言われるがままに「〇〇に財産を遺す」と書いても、それを認めることはできないという解釈です。
考えてみれば、当然の話ではあります。
後見人は代理人として働ける?
では、被後見人を守る立場にある後見人が代わりに判断できるのでしょうか?
実はこれも、法的には認められていません。
確かに成年後見人は、被後見人の財産を守り代わりに判断する立場にあるものですが、それと「遺言を残す」という行為は必ずしも結び付きません。
例えば、成年後見人であるAさんと被後見人のBさんがいたとして、
Aさんの代わりにBさんが「AはBに全財産を遺す」と書いたケースを想像してみて下さい。
このような行為、法的な解釈を待たずして、認められるワケがありませんよね。
成年後見人が遺言できる場合もある
成年後見人も、全く遺言を残せないワケではありません。
と言うのも、遺言を書くためには「事理弁識能力」が求められるワケであり、「成年後見人だから書いてはいけない」と規定はしていません。
成年後見人であっても、一時的に判断能力が回復することはありますから、回復状態で遺言を残すことは十分に可能です。
ただし、成年後見人が遺言を残す場合、「意思能力が回復している」ことを証明する必要があります。
具体的な条件としては、
〇 医師2名の立ち合いのもとに書く
〇 事理弁識能力が欠けていないと付記してもらう
上記2件が求められています。
遺言には大きく分けて3つの書式がありますが、成年後見人が遺言する場合は「公正証書遺言」が最も信頼性が高いものと解釈されます。