成年後見人のデメリットとは?相続対策としては使えない?
成年後見人制度は、判断能力が低下した被後見人の財産を、本人に変わって裁判所から任命された後見人が管理する制度です。
被後見人は判断能力が低下した常態 にあるため、例えばオレオレ詐欺などを仕掛けられた場合、普通の人よりずっと簡単に引っかかってしまいます。
成年後見人制度はそんな被後見人を守るために、後見人本人の意思すら封じ込めてしまう強力な権利を与えられています。
ただし、相続について考えた場合、その強力な権利が足かせとなり「デメリット」に繋がってしまうことも。
今回は、そんな成年後見人制度と相続時のデメリットの関係を追及しようと思います。
成年後見人制度とは?
冒頭にて触れた通り、成年後見人制度は、常に判断能力が低下した人の代わりに後見人が財産を保護する制度です。
後見人には、「取消権と代理権」という2つの強力な権利が与えられており、
取消権 … 成年後見人が勝手に契約したものを取り消すことができる
代理権 … 成年後見人に代わって必要な契約を代行して締結できる
被後見人に代わって法律行為を行うことができます。
相続に視点を集約した場合、特に注目すべきは「代理権」でしょう。代理権を行使すれば本人に代わって土地の活用や売却、預金口座の資産運用等が行えそうです。
現実には不可能である
ところが、現実は甘くありません。
成年後見人には確かに代理権が認められていますが、その代理権を際限なく行使した場合、成年後見人として不適格であると判断されてしまうでしょう。
後見人につくと家庭裁判所に定期的な報告を行う必要がありますが、その際に財産の使途や運用の目的を説明しなくてはなりません。
〇 推定相続人の利益を確保するために財産を贈与した
〇 居住物件の売買契約を締結した
〇 預金口座のお金を不動産や株式に投資した
こうした運用を行った場合、ほぼ100%問題となります。
成年後見人は「本人のため」の制度であり、「推定相続人の利益を確保するため」ではないからです。
成年後見人は慎重な判断を
詐欺などの被害リスクを抑制できる一方で、「財産を増やす」といった積極的な運用は認められにくいのが、成年後見人制度のデメリットです。
相続対策として成年後見人制度を利用する場合は、こうしたデメリットを抑えておく必要があります。
家族信託など他の制度と比較して、ご家庭の内情に一致した制度の利用を検討することをオススメします。