遺言の有効範囲とは?できることと、できないことは?
遺言は基本的には、本人の意思に従い自由に記載することが可能です。
多くの方は財産や相続に関する内容ばかりを想像すると思いますが、子の認知や後見人の指定など、お金以外の内容にも法的な効力を持たせることができます。
ただし、いくら遺言と言えど、無限の範囲を持つワケではありません。特に法的な効力を持たせるとなると、有効範囲の制限はやむを得ないと言えるでしょう。
今回は、そんな遺言の有効範囲について解説します。
身分に関する有効範囲
遺言は、財産以外の身分的な内容にも影響を及ぼすことが可能です。
身分に関する有効範囲の代表例
〇 子の認知
〇 未成年者の後見人の指定 など
養育すべき子の処遇については、ご自身の意思に従って決定することができます。特に未成年者を遺して亡くなる場合、後見人の指定は非常に重要です。
また、子の認知に関しても、ご自身の財産と認知すべき子の行く末を考え、勇気ある決断下す方も少なくありません。
財産の処分に関する有効範囲
相続以外にも財産の処分方法は存在します。
財産の処分に関する有効範囲
〇 ご自身の意思による特定人物への遺贈
〇 宗教団体や慈善事業団体などへの寄付 など
何らかの事情でご自身の財産を相続のテーブルに乗せたくない時に、遺贈や寄付などを遺言で決断ケースも見られます。
ただし、よほどのことが無い限り、法定相続人は財産の相続を期待しているものです。遺言ではじめて意思の発表を行う場合は、一定の配慮を行うべきでしょう。
相続に関する有効範囲
相続は遺言のメインとなる内容です。
当然、多くのことを法的に有効に導くことができます。
相続に関する有効範囲の代表例
〇 相続分の指定(子Aに1/3、子Bに2/3など)
〇 遺産分割方法の指定(子Aに自宅、子Bに銀行預金など)
〇 遺産分割の禁止(5年まで)
〇 特別受益の持ち戻しの免除
〇 相続人の排除や取消し(虐待された子Aを相続人から排除など)
〇 遺言執行者の指定 など
事例として特に多いのは、やはり相続分と遺産分割方法の指定です。
自身の面倒を見てくれた子とそうでない子に差を付けたいなど、孝心の厚薄をお金で評価するというケースは自然な事例。
高齢化社会が進む昨今、遺産分割の内容に悩む方も増えています。
法的に効力のない遺言
法的に有効だと誤解されがちな記載内容も存在します。
法的に効力の認められない遺言
〇 離縁などの遺言(死後、配偶者と離縁するなど)
〇 養子縁組の遺言(死後、養子縁組を解消するなど) など
婚姻や養子縁組は、一方の意思だけで決定できることではありません。
遺産相続をご自身の目論見通りにしたいと考え、こうした遺言を残しても、有効なものとは認められにくいのが現実です。