成年後見人と相続権の関係を徹底解説!注意すべき3パターン
成年後見人および被後見人と相続権は、やや複雑な関係にあります。
成年後見人は被後見人の財産を守るための制度です。ところが、場合によっては成年後見人と被後見人の間に利害関係が生じてしまい、正常な相続権の行使が妨げられることも。
今回は、そんな成年後見人と相続人の関係を中心に、
〇 相続権利者の中に成年被後見人がいる場合
〇 成年後見人と被後見人が相続権を持つ場合
〇 成年後見人と相続権利者が対立した場合
上記の注意すべき3パターンをご紹介。それぞれの関係を解説します。
相続権利者の中に成年被後見人がいる場合
成年後見制度絡みのトラブルで最も多いパターンです。
通常、被相続人が亡くなった時は相続財産を分割するために、遺産分割協議と呼ばれる会議を行います。
ところが、正常な判断能力の欠如した「被後見人」が参加しても、公平かつ適切な分割協議を進めることは難しいです。
そのため、成年後見制度はこうした状況下において、被後見人の代わりに後見人が遺産分割協議に参加することを認めています。
モデルケースで説明するなら、認知症を患っている被後見人Aさんの代理として、弁護士のB氏が家族間の遺産分割協議に参加するといったシーンでしょうか。
制度を理解していない方の中には、「なんで家族会議に弁護士が口を出すんだ!」と怒り出す方もいらっしゃいます。
成年後見人と被後見人が相続権を持つ場合
相続権を行使する法定相続人の中に、成年後見人と被後見人が内在するパターンです。
誰が成年後見人となるかは家庭裁判所の判断により決定しますが、その場合に家族が指名されるケースは決して少なくありません。
強度の精神障害を患った次男Aさんの後見人として、長女であるBさんが後見人に就任するケースも十分考えられます。
こうした状況下において、母であるCさんが亡くなった場合などは、成年後見人と被後見人が同時に相続権を得ることになります。
裁判所では、成年後見人と被後見人が遺産分割協議を行うことを認めていません。利害関係が対立してしまい、一方的に不利な条件を押し付けてしまうことが考えられるからです。
そのため、裁判所はこうした状況が生じた場合、「特別代理人」を選定。特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。
成年後見人と相続権利者が対立した場合
成年後見人は本人の財産を守ることを目的としており、「相続権利者の財産を保全するため」ではありません。
そのため、成年後見人と相続権利者の間ではしばしば対立が生じ、トラブルになります。もちろん、成年後見人が適切な財産管理を行っている以上、異論を差し挟む余地はありません。
ところが、現実には被後見人の不行跡により、被後見人および相続権利者の利益が害されてしまうことも。
そのため、裁判所は以下の状況において、「成年後見人の解任」を認めています。
1、不正な行為があった場合
2、著しい不行跡がある場合
3、その他、後見人の任に適さない場合