遺言で財産放棄させることはできるのか?遺言の効力の限界は?
遺言はご自身の最後の意思。
これまでの人生を共に歩んできた人たちに対して、ご自身の気持ちを表現するための最後の機会でもあります。
ただし、遺言を記す中で、「この人には相続して欲しくない」と感じることもあるでしょう。実際、遺言において「財産放棄して欲しい」と記すケースも見られます。
ただし、日本の法律は相続人の排除を手放しに認めてはいません。今回は、そのあたりを詳しく解説しようと思います。
財産放棄させるには理由が必要
相続人を財産放棄させるには、「相続人の廃除」が必要です。
ただし、日本の法律は相続人の廃除を被相続人の意思に任せきりにしておらず、財産放棄をさせる「正当な理由」を求めています。
ここでいうこの正当な理由は民法により規定されており、主に下記のものが該当します。
1、被相続人に対して虐待を行う行為
2、被相続人に対して重大な侮辱を行う行為
3、推定相続人に著しい非行が認められる場合
被相続人に対して虐待を行う行為
被相続人を虐待する行為が行われた場合、その者は相続から排除され、遺留分を含め財産を放棄した状態になります。
高齢者の虐待行為は明るみに出にくく、遺言に記されるまで全く発覚しなかったというケースも存在します。
被相続人に対して重大な侮辱を行う行為
被相続人に対する侮辱行為は、相続廃除の要件です。
ただし、侮辱行為は「重大な」という要件が求められており、単なる親子喧嘩や夫婦喧嘩の際の暴言程度(バカ、アホなど)で認められるものではありません。
恐らく軽い暴言に腹を立てた被相続人が遺言にて、相続人の廃除を行い財産放棄を求めたとしても、遺言の内容は却下されるでしょう。
つまり、ここで認められる暴言は、懇意や養子縁組を継続しがたいような内容や、反復継続して精神的な苦痛を与える場合など、あくまで「重大なもの」であることが大切です。
推定相続人に著しい非行が認められる場合
推定相続人の著しい非行がある場合も、遺言にて相続人を廃除することが可能です。
ただし、これも「著しい」という要件が付与されています。
著しいの基準は裁判所の判断によりますが、「意に沿わない相手との結婚」や「家業を継がない・同居しない」程度の理由では到底認められません。
ただし、これは暴力団員との結婚など、反社会的な性質ものであれば認められる場合もあり、あくまでケースバイケースです。
また、夫婦の場合は長期間の浮気や妊娠中絶の強制などが該当します。