認知症の人が相続をする場合、法定後見制度を利用しよう!
遺産相続の際に、複数の相続人がいる場合は遺産をどう分割するかを話し合う、遺産分割協議が必要となります。
この時、すべての相続人が参加しなければいけないのですが、その中に1人でも認知症などで判断能力が喪失しているとされる人がいる場合、協議が進展しません。
そんな時に利用したいのが、法定後見制度なのです。
遺産分割協議
遺産を相続する際には、相続人がそれぞれどの遺産を相続するのかを話し合うために、遺産分割協議をしなくてはいけません。
しかし、この遺産分割協議における注意点として、相続人は全員が参加するというのが前提となっているため、そろっていない状態では協議ができないのです。
また、相続人はただ全員がそろっていればいい、というわけではありません。
参加するすべての相続人が、自分の相続する財産を主張できる状態、つまり判断能力がある状態でなければそろっているとはみなされません。
どういうことかというと、相続人の中に認知症の人がいる場合、たとえ話し合いには参加していてもいないものとみなされるため、遺産分割協議を進めることができないのです。
これは、判断能力を喪失しているからといって不利になってしまうような条件での遺産分割協議をされないようにするための措置ですが、このままでは協議を進めていくことができなくなります。
そうなることを防ぐために、法定後見制度の利用を考えてみましょう。
法定後見制度の活用
この法定後見制度というのは、具体的に何をするのか、その制度を利用した場合、どうなるのかという点を考えてみましょう。
法定後見制度というのは、認知症などで判断能力を喪失したとみなされる人の財産を保護することを目的として後見人を選定する制度です。
例えば、認知症の人が正常な判断を下せない状態で、不当な条件で契約をした場合にそれを後見人が代理で取り消すことができます。
後見人は、それ以外にも被後見人の預貯金の管理や、老人ホームなどに入居する際の契約の代行、不動産の代理処分などが可能です。
また、生活上必要となる入院時の手続きや介護認定の申請など、法律に基づいた手続きなども代理で行うことができます。
その一環として、相続の手続きなども行うことができます。
法定後見制度は、本人もしくは親族が家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所が後見人を選定します。
その際、後見人に選ばれるのは弁護士や社会福祉士などの専門家が多いのですが、親族は選定されないことと決まっています。
後見人がいれば、相続人に認知症の人がいても遺産分割協議を進めることができるのですが、注意点として遺産分割協議が終わったからといって後見人を解任することはできません。
後見人に問題がない限りは、一生涯後見が続きます。
後見人は、無償で貢献するわけではないので、毎月報酬を支払う必要があります。
また、申立てについても数万円の費用がかかるので、その点を踏まえたうえで法定後見制度を利用しなくてはいけません。
遺産分割協議において、相続人のうち1人が認知症の場合でも、法定相続に従った分配であれば後見人がいなくても問題ありません。
法定後見制度の利用が望ましくない場合は、遺産の分配を法定相続の通りに行いましょう。
まとめ
遺産分割協議では、相続人の中に認知症の人がいる場合は協議が進まなくなります。
その場合、法定後見制度を利用して協議を進めたほうがいいかもしれません。
ただし、後見人はいったん選定されてしまえば、遺産分割協議が終わった後も後見を続けることとなるので、それが望ましくない場合は後見人を付けるのではなく、法定相続通りに遺産を分配するのがおすすめです。
そうすれば、後見人がいなくても遺産の分割は可能となります。