相続における“印鑑代”って何?概要や金額を解説します
相続が開始してから、実際被相続人の財産を引き継ぐまでの間には、さまざまな費用が発生します。
その費用の1つに、“印鑑代”が挙げられます。
場合によっては必要でないケースもある費用ですが、必要になるケースに備えて、今回は相続における印鑑代の概要や金額について学んでおきましょう。
相続における“印鑑代”の概要
相続における“印鑑代”とは、相続人に法定相続分とは違う財産の分け方を認めてもらう場合に発生する金銭のことを言います。
相続人に法定相続分とは違う財産の分け方を認めてもらうには、遺産分割協議書に押印をしてもらわなければいけないため、このように呼ばれています。
“判子代”と呼ばれることもあります。
印鑑代は基本的に、財産が法定相続分とは違う分け方になることで有利になる相続人から、不利になる相続人に対して支払われます。
相続における印鑑代が発生するのはどんなケース?
例えば被相続人によって遺言書が作成されていない場合で、長男が被相続人の家業を継ぐために、相続財産をすべて相続したいと考えているとします。
この場合、長男がすべての財産を引き継いでしまうと、長男以外の相続人は法定相続分を引き継ぐことができなくなります。
ただ被相続人の相続財産には、家業の運営費などが含まれており、これを分けると家業を継ぐことが難しくなってしまうとしましょう。
したがって長男は、何とか他の相続人に納得してもらわないといけません。
このケースでは、長男から他の相続人に対して印鑑代が発生する可能性があります。
“長男がすべて財産を引き継ぐ”という内容に納得し、押印してもらうことが目的です。
相続における印鑑代は思わぬタイミングで発生することも
例えば被相続人の配偶者が、自分以外の相続人の存在を知ってしまったときなどにも、印鑑代が発生する可能性があります。
被相続人に、前妻との間に生まれた子どもがいた場合などです。
この場合、被相続人と前妻との間に生まれた子どもは、相続人として認められます。
ただ被相続人の配偶者が、面識がない子どもに財産を分けたくないと考える場合もあります。
ただ財産を分けたくない場合は、被相続人と前妻との間に生まれた子どもに、“配偶者がすべて財産を引き継ぐ”という内容を許可してもらわなければいけません。
そのとき、すぐに許可してくれれば問題ありませんが、納得してくれなかった場合は、配偶者から被相続人と前妻との間に生まれた子どもに対して、印鑑代を支払わなければいけない可能性があります。
相続における印鑑代の金額について
相続における印鑑代の金額は、一体どれくらいが適正なのでしょうか?
結論から言うと、相続における印鑑代に適正価格は存在しません。
なぜかと言うと、印鑑代は法律で支払いが義務付けられている金銭ではないためです。
あくまで相手に納得して押印してもらうために任意で支払う金銭のため、いくらあればOKというわけではないのです。
ただ相続において納得していない相続人がいる場合に、印鑑代を支払わずにいると、そのまま意見は対立したままになり、調停や審判に進んでしまう可能性が高くなります。
したがって、内容を許可してもらう側の相続人は、納得していない相続人に対して、まず“印鑑代を支払えば許可してくれるのか”ということを聞いてみましょう。
ただあまりに法外な金額を要求された場合は、調停によって解決を試みる方が賢明と言えます。
まとめ
相続において発生する可能性がある、“印鑑代”について解説しました。
法定相続分とは違う財産の分け方をすることで、引き継げなくなる金額が大きければ大きいほど、その相続人はなかなか押印してくれなくなります。
そのまま調停に移行するのも1つの選択肢ですが、お互いが納得し合えるのであれば、印鑑代で穏便な解決を試みることも検討すべきだと言えます。