有効性がない遺言書とはどんなものなのかについて解説します

遺言書には、財産の分け方や相続人の廃除、後見人や遺言執行者など、さまざまなことを決定するための有効性があります。
ただ遺言書の中には、“有効性がない遺言書”というものが存在します。
では有効性がない遺言書とは、具体的にどんな遺言書のことを指すのでしょうか?
詳しく解説しましょう。

有効性がない遺言書とは?

有効性がない遺言書とは、その遺言書に有効性があると認められる条件で作成されていない遺言書のことを言います。
つまり作成のルールを守っていないため、遺言書でありながら有効性を発揮できないものだということです。
では次は、“自筆証書遺言”、“公正証書遺言”において有効性がないとされるものを、具体的に見ていきましょう。

有効性がない自筆証書遺言とはどんなものなのか?

自筆証書遺言は、被相続人が内容をすべて自筆で作成し、押印する必要があります。
被相続人が自筆する内容には、財産の分け方や種類だけでなく、日付や氏名なども含まれています。
また内容を変更した場合は、被相続人が変更箇所を記載し、なおかつ内容を変更した箇所に署名・捺印を行わなければ、変更が認められません。
したがって、有効性がない自筆証書遺言として挙げられるのは、以下のようなものになります。

・パソコンで作成された、複数人の自筆で作成された自筆証書遺言
自筆証書遺言は被相続人の“自筆”で作成する必要があるためです。

・音声として遺された遺言
自筆証書遺言として認められるのは、あくまで書面に残っているもののみであるためです。

・押印・署名がない、日付が記載されていない自筆証書遺言
理由は前述の通りです。

・日時や財産の種類が特定できない自筆証書遺言
日時や財産の種類が記載されていても、字が崩れていて読めない場合などは、有効性がなくなります。

・被相続人以外が署名した自筆証書遺言
内容と同じく、署名も必ず被相続人の自筆でないといけないためです。

有効性がない公正証書遺言とはどんなものなのか?

公正証書遺言は、2人以上の証人が立ち会い、被相続人が遺言の趣旨を証人に言葉で伝え、その内容を証人が筆記することで作成されます。
したがって以下のようなものは、有効性がない公正証書遺言という扱いになります。

・証人がいない状態で作成された公正証書遺言
公正証書遺言は、必ず証人が2人以上いる場で作成しなければいけないためです。
また一瞬証人がいなくなり、再びその場に戻ってきたとしても、証人がいない間に公正証書遺言を作成したのであれば、それは有効性を発揮できません。

・証人として認められない人物立ち会いのもと作成された公正証書遺言
公正証書遺言作成時に立ち会う証人は、“未成年”、“相続人の配偶者や直系血族”、“証人の配偶者と4親等以内の親族”、“公証役場の職員”、“遺言の内容が理解できない人物”のいずれにも該当しない人物である必要があります。

・被相続人から証人に言葉で伝えられなかった公正証書遺言
証人が筆記する内容は、必ず被相続人が言葉で伝える必要があるためです。

・立ち会った証人が後で証人として認められない人物であると発覚した場合
証人が2人立ち会い、適切な手順で作成された公正証書遺言であっても、後々証人の1人が証人として認められない人物であると発覚した場合、その公正証書遺言は有効性を発揮できません。
2人の証人のうち1人が欠格者であれば、実質証人は1人しか立ち会っていなかったことになるためです。

まとめ

有効性がない遺言書とはどんなものなのかについて解説しましたが、いかがでしたか?
遺言書にはさまざまな作成におけるルールがあり、1つでもルールを守れていない場合は遺言書として認められません。
もし遺言書が有効性を発揮できなくなってしまった場合、思惑通りの相続ができないだけでなく、膨大な時間を無駄にしてしまうことにもなるため、慎重に作成しましょう。

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