相続と生活保護の関係性について徹底的に解説します
経済的に困窮している方に対し、国や自治体から最低限度の生活を保障するための金銭が支給される制度である“生活保護”。
では相続と生活保護には、一体どんな関係性があるのでしょうか?
今回は生活保護を貰っている方の相続、または生活保護を貰っていた親からの相続などについて解説します。
生活保護を貰っている方の相続について
遺言書が作成されていない場合、法定相続人は通常、被相続人の財産すべてについて相続する権利があります。
ただ相続人が生活保護を貰っている場合は、すべての財産を受け取れません。
つまり生活保護を貰い続けながら財産を受け取る場合、一定の範囲内の財産しか相続できないとうことです。
生活保護を貰っている方が受け取れる相続財産は以下の通りです。
- 生活するために最低限必要な財産
- 事業を営むために最低限必要な財産
- 処分できない財産
- 処分が著しく難しい財産
生活保護を貰っている相続人が、上記以外の財産を受け取ることになった場合、生活保護を貰うための資格を失ったと見なされます。
つまり被相続人から多額の預貯金などを受け取った場合、生活保護を貰えなくなる可能性があるということです。
生活保護を貰っている方の相続放棄は可能なのか?
先ほど、生活保護を貰っている方が受け取れる範囲外の財産を相続において受け取る場合、生活保護が貰えなくなる可能性があるという話をしました。
ただ生活保護を貰っている方の中のほとんどは、金銭が支給されても苦しい生活を強いられている方であるため、当然継続して生活保護を貰いたいと考えます。
では生活保護を貰っている方は、多額の財産を受け取らず、生活保護を貰い続けることができるのでしょうか?
結論から言うと、被相続人における相続財産を受け取らずに放棄するという行為は、認められない可能性が高いです。
なぜかと言うと、相続放棄をしてしまうと、生活保護の原理原則に反することになってしまうためです。
生活保護は、あくまで最低限度の生活を保障するために支給される金銭です。
相続において多額の財産を受け取ることができれば、その財産で最低限度の生活が送れるにも関わらず、それを自ら放棄し生活保護を貰い続けるというのは、言わば“財産があるのに生活保護を貰っている”のと同じような行為だと言えます。
生活保護を貰っている方が相続放棄できるケースもあるの?
生活保護を貰っている方は、基本的に相続放棄ができませんが、例外もあります。
被相続人が遺した財産の中に多額の負債がある場合は、生活保護を貰っている方であっても、相続放棄ができる可能性があります。
なぜかと言うと、たとえ被相続人から多額の財産が相続されたとしても、もっと多くの負債があった場合、生活保護を貰っている方が財産を活用して、最低限度の生活を送れない可能性が高くなるためです。
生活保護を貰っていた親からの相続について
では、相続人が生活保護を貰っている場合ではなく、被相続人となる親が生活保護を貰っていた場合の相続は、どう進めればいいのでしょうか?
結論から言うと、生活保護を貰っていた親からの相続に関しては、それほど大きな障害となるものはありません。
相続人自体が生活保護を貰っているわけではないため、通常の相続と同じような流れで財産を受け取ります。
ただ親が生活保護を貰っていた場合、受け取れる財産はほとんど残っていないケースが多いです。
まとめ
相続と生活保護の関係性について解説してきました。
生活保護を貰っている方でも、制限の範囲内であれば、被相続人から財産を受け取ることができます。
ただ範囲を超えて受け取る場合は、生活保護を貰えなくなる可能性があり、相続放棄ができる可能性も低くなります。
つまり生活保護を貰っている相続人は、相続が開始した時点で、生活保護を貰い続けることを諦めなければいけない場合もあるということです。