保険金の受取人は遺言で可能?~相続財産との関係は?~
時折、遺言書に保険金の受取人について記載されていることがあります。
この場合、受取人の変更は可能なのでしょうか?
また、相続財産との関係はどのようになるのでしょうか?
ここでは、受取人変更の仕組みと、相続財産との関係について考えてみましょう。
遺言による保険金の受取人変更は可能なのか?
そもそも、遺言で保険金の受取人を変更するということは可能なのでしょうか?
この点については、平成22年に施行された保険法の第44条に明記されているのですが、遺言による変更が可能とされています。
例えば、元々は長男が保険金の受取人となっていたものの、遺言によって次男に変更するケースや、先妻の子どもから後妻に受取人を変更する場合などが考えられます。
これは、公正証書遺言に限らず、自筆証書遺言であっても有効ですが、必ず記さなければならない項目があるため、それを守っている必要があります。
必ず遺言の中に記されていなければならない点としては、生命保険の会社名、証書番号、元々の受取人の名前、変更後の受取人の名前、作成年月日です。
このうちどれかが抜けていれば、無効とされる可能性があります。
また、自筆ではない、署名捺印がない、日付が明記されていない、連盟もしくは共同で作成されている、作成者が15歳未満などの遺言書は、無効とされます。
口述によって代筆した場合も無効とされることが多いので、気を付けましょう。
遺言による受取人の変更についてですが、保険法では相続人が変更されていることを保険者に通知することと定められています。
そうなると、遺言書が見つかるまでに時間がかかった場合などは保険金をすでに受け取っている可能性もあり、また故意に隠して変更前の受取人が受け取る可能性もあります。
とはいえ、受取人の変更について新しい受取人が聞いていないということはまずないと考えられるため、発覚した際には裁判となる可能性があります。
こういったことがないように、生前にきちんと話し合っておいた方がいいでしょう。
受取人の変更に該当するのは基本的に死亡保険金であり、一緒に支払われることが多い入院給付金などはこれに含まれない場合があります。
入院給付金については、死亡保険金とは別に考えるものなので気を付けましょう。
相続財産との関係は?
それでは、死亡保険金の受取人変更と相続財産とはどう関係するのでしょうか?
遺言で受取人を変更した場合に、相続財産にどのような影響があるのかを考えてみましょう。
まず、死亡保険金というのは、みなし相続財産といわれ、民法上では相続財産に含まれず、税法上でのみ含まれます。
どういうことかといえば、相続税の対象にはなっても財産分割の対象とはならない、ということです。
また、税法上においても、受取人ではなく法定相続人1人につき500万円の非課税枠があります。
たとえば法定相続人が3人いて、そのうち1人が保険金を受けとる場合には、その保険金が1,500万円以下であれば非課税となるのです。
そして民法上では相続財産とならないので、この死亡保険金を考慮しない形で財産の分与をおこなうことになります。
つまり、保険金の受取人が変更された場合でも、相続財産の分割には何ら影響しない、ということです。
そのため、保険金の受取人が変更されたとしても、そのことで財産分与を受けられないということはありません。
まとめ
保険法が施行されたことで、死亡保険金の受取人を遺言によって変更できるようになりました。
しかし、書き方や必須項目などが決められているため、それを守っていないと変更は無効となる場合があります。
また、相続時にトラブルとなることも多いため、なるべくなら生前にしっかりと話し合って変更するべきでしょう。