家族信託登記された不動産は売買取引ができるのか?
家族信託の取扱い条項に不動産が含まれている場合、家族信託の登記を行います。
ところが、現実に家族信託登記を行ったとして、本当に受託者は不動産の売買はできるのでしょうか?
家族信託は新しい制度で情報不足。気になる方も多いかと思います。今回は、家族信託登記された不動産について概要の解説を進めます。
家族信託の登記不動産は売買可能です
信託契約の条項の範囲において、対象不動産の売買が含まれている場合は、家族信託の登記不動産は売買することが可能です。
この場合、取引不動産は受託者を売主として、買主と取引を行う形になります。手続面も一部を除いて、基本的には通常の不動産取引と変わりません。
なお、信託不動産の売買により取得した売却利益は、「受益者」のものです。通常は信託財産への組み入れが行われますが、信託契約に特別の定めがある場合はそちらに従います。
ちなみに、取引付随する譲渡所得税も、受託者ではなく受益者が納税義務を負うものと解釈されています。
信託条項に記載がない場合は売却不可能
家族信託は制度上、登記不動産に関する信託契約の内容に「売買」の記載がなければ、受託者が登記不動産を勝手に売却することができません。
仮に当初は売却を予定していなかった物件を、契約締後に売却する事情が生じた場合、
1、信託契約を一旦解除して、本来の所有者が自身で売却する
2、信託契約の内容に従った手続きで、契約の内容を変更する
などの対策を取ることにより、登記不動産の売却手続きが可能です。
信託不動産の売買を拒否する業者も多い
ただし、制度上できるからといって、全ての不動産会社で取引が行えるとは限りません。
と言うのも家族信託は制度上新しく、不動産会社や金融機関も十分な知識を備えているとは言えません。
また、信託不動産の取引を断る業者も多いのが実情で、「どうしても取引業者が限られてしまう = 条件の悪い取引になってしまう」可能性を否定できません。
専門機関への相談を
信託不動産の登記を行う方の中には、「いざという時に信託不動産を現金にしておきたい」とお考えの方が少なくありません。
にもかかわらず、取引業者が限定された結果、不利な取引を強いられるのは不本意極まりないと言えるでしょう。
家族信託はまだまだ新しく、複雑な制度でもあります。
契約締結や手続き完了までをゴールとせず、その後の事態にも対応できるように、相続専門機関などに適切なアドバイスを求めることをオススメします。