家族信託と成年後見制度はどこが違うの?相続対策は?
認知症の方の財産を管理する方法は、成年後見制度と家族信託の2種が挙げられます。
どちらも家族や親族の財産を管理する制度ではありますが、実際に両者がどのように違うのかと問われると、曖昧な方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、家族信託と成年後見制度の違いを解説。できることとできないことを、きちんと区別していこうと思います。
身上監護の違い
成年後見人は面倒を見てもらう「被後見人」のために、後見人がサポートを行う制度です。
そのため、財産の管理や処分に加えて身上監護権などを行使して、老人ホームや生活全般の行為に関して働きかけを行います。
これに対して、家族信託ではあくまで「財産の信託」が目的であるため、身上監護に関わることはありません。
財産の処分方法
成年後見人は「被後見人のために」行動する制度です。
そのため、たとえ「友人に150万円を渡したい」など、被後見人の意思が介在したとしても、被後見人のためでないと判断されれば行使することができません。
これに対して、家族信託では受託者の責任において、信託目的の範囲内で財産の運用が可能です。不動産が関わる取引であっても、登記上の受託者が所有者に代位して取引を行います。
取消権に関する扱いの違い
家族信託は信託財産であることを理由に、法律行為を取り消すことはできません。
家族信託の場合は本人の財産が切り離されている状態にあるため、委託者の意思能力が財産の運用決定に影響を与えることはほとんどないと考えらえるからです。
これに対して成年後見人の場合、被後見人が勝手に行った法律行為を、後見人が取り消すことが可能です(法定後見人の場合)。ただし、日常生活上必要な行為とみなされる行為については、取り消すことができません。
相続に関する扱いの違い
相続人が死亡した場合、通常は銀行口座の凍結等の処理が行われます。
これは遺産分割協議がまとまり財産の帰属先が決定するまでの間、不正にお金が流出してしまうことを防ぐためです。
ところが家族信託の場合、委託者が死亡しても信託財産の管理口座が凍結されることはありません。また、委託契約の内容によっては死亡後も信託契約が続くため、受託者の管理の下にスムーズな遺産相続が実現します。
これに対して、成年後見人制度では、後見人の死亡時点で契約が終了します。
後見人が管理していた財産は相続人により引き継がれ、相続人が遺産整理や事務手続きを行うこととなります。