民事信託と家族信託の違いとは?同一って話は本当?
民事信託と家族信託はどちらも「同じ意味」を持つ用語です。
つまり、民事信託と家族信託の間に明確な違いは存在せず、民事信託と家族信託はただの「言葉の違い」に留まります。
これらの信託制度は法改正の影響を強く受け、財産管理のための画期的な制度として多くのメディアの脚光を浴びました。ただし、制度としては新しく、周知が十分に進んでいないため、2つの用語が生まれたと推察します。
そこで今回は、民事信託や家族信託と呼ばれるこれらの制度の基本を解説。これらの制度ができた背景を含め、概要を説明しようと思います。
信託とは?
信託とは「自己の財産を他社に預ける」行為を意味しており、従来は「信託法」と呼ばれる法律により厳然と規制されていました。
信託行為がビジネスとして無制限な環境にあると、安易に財産を預ける人が出てきたり、言葉巧みに財産をだまし取る悪徳業者が横行してしまうからです。
そのため、従来の信託法の環境下で信託業務を行える業者は実質的に、「銀行業などの金融機関」に限定。一般的な人にとってあまり縁のない法律でした。
では、どうして急に「家族信託や民事信託」が叫ばれるようになったのでしょうか。違いの問題とともに、気になる方は多いかと思います。
平成18年、信託法改正
家族信託が急速に広まった背景には、信託法の大きな改正が影響しています。
従来は非常に厳しかった信託法が平成18年に大幅変更され、従来と違い営利を目的としない場合、一般的な人が「民事信託」が行えるように作り変えられました。
民事信託は、多くが判断能力が衰えた方の財産を保護する目的で行われます。
そのため、財産を預かる受託者は委託者の家族が就任することが多く、これらの背景から「家族信託」と呼ばれ親しまれるようになったとも考えられます。
民事信託や家族信託ができた理由は?
民事信託や家族信託が急速に広がりを見せている理由の根底には、「高齢化社会の進行」が挙げられます。
日本は超高齢化社会を迎えており、肉体的には健康であれど、判断能力に衰えを感じている高齢者の方は年々増加しています。
ところが、既存の「成年後見制度」や「遺言」のみでは適切な財産管理を行うことができず、多くのトラブルが生じているのもまた事実。法律と現状の違いが克明になります。
更に核家族化による絆の希薄化の影響も受け、相続に至っては「争族」という俗語が生じるほどの惨状を呈するケースも少なくありません。
こうした状況において、
〇 身上監護を伴わず財産管理に特化
〇 営利を目的としない親身な財産管理
〇 後見制度では対応できない柔軟な資産運用
既存制度では対応できない、上記のような特長を持つ民事信託や家族信託が広がりを見せているのは、当然の背景と言えるでしょう。