相続税の猶予制度!計画的な税負担で余裕のある納税を
相続税は原則として「一括納税」が課されています。しかし、例えば農業を家業にしている人に、農業では到底行きつかない評価額をベースにした農地相続税を課す行為は、例え国であろうと許されるものではありません。
そこで、国は一定の条件の満たした場合に相続税の猶予制度を設けています。今回はこの「相続税の猶予制度の要件」を中心に、その概要を見て行きましょう。
相続税の猶予制度は、「農地」または「非上場株式」を相続した場合に適用できる制度です。どちらも条件や扱いが異なるので、別の制度と考えても良いでしょう。
ここでは両者を順番に解説し、その概要をご説明します。
農地の猶予制度!条件を満たせば相続税免除も
相続で農地を受け継いだ場合、猶予制度を適用することが可能です。制度を適用した状態で農業を継続し、20年以上の実績を積んだ場合「相続税が全額免除」されます。
農地の猶予制度は「相続人」と「被相続人」に対して、下記のうちいずれかの条件を満たすことを定めています。
被相続人に求められる代表的な要件
〇 被相続人が死亡まで農業を営んでいたこと
〇 生前一括贈与を行っていること
〇 被相続人が死亡するまでに特定貸付 の対象者であること
〇 被相続人が猶予制度適用者であり、一定の条件 に合致すること
相続人に求められる代表的な要件
〇 申告期限までに農業を開始していること
〇 農地の生前贈与を受けて一定の条件 を満たしている人
〇 相続税申告期限が到来する前に特定貸付を受けた人
また、対象となる土地についても複数の規定が設けられています。
非上場株式の猶予制度
非上場株式の相続を行う場合、対象株式から算出された課税税額のうち、一定割合が猶予される制度です。更に、相続人が対象株式を死亡時まで保有していた場合、相続税の納付は免除されます。
被相続人に求められる代表的な要件
〇 被相続人が代表者であること
〇 被相続人または同族者が50%を超える議決権を有し、一定の条件 を満たすこと
相続人に求められる代表的な要件
〇 相続開始直前に対象企業の役員であること
〇 相続開始の翌日から5か月後に代表権を有していること
〇 相続税の申告期限までに株式すべてを保有していること
非上場株式における猶予制度のデメリット
非上場株式の相続猶予制度には、一定のデメリットが存在します。同制度の免除には企業経営に対する条件が付与されており、例えば
〇 相続人が5年以内に代表権を失う
〇 雇用比率において相続開始時の8割を維持できない
などの事態が生じた場合、相続税に対して一定の利子を付与して納税しなくてはなりません。同制度を利用するには慎重な判断が必要です。