判断能力に問題がある人はどのように遺言を書くべきか?
民法の学説を中心に、意思能力を持たない人が行った法律行為は、当然に無効となると解されています。
では、認知症や強度の精神障害を患い判断能力に問題がある人は、遺言を残すことができないのでしょうか? 本人の意思が介在しない相続があり得るのでしょうか?
今回は、遺言の基本的性質から入り、遺言と判断能力について解説を進めようと思います。
遺言は基本的に誰でも残せる
遺言は他の法律行為と比べて、本人の判断能力がかなり強く尊重される制度です。
実際、民法961条では「15才に達したものは、遺言をすることができる」と規定されており、そこには親権者の同意も必要ありません。
つまり、例え判断能力に難があっても、本人の最後の意思である以上、法律も余程の事が無い限りは優先するべきと判断している形です。
成年後見制度の対象者も遺言できる
もちろん、成年後見制度の対象者も一定の状況下において遺言を残すことが可能です。
民法は962条で遺言を特別扱いしており、成年後見人の取消権や保佐人補助人の同意見は、遺言に限って適用されないと明示しています。
そのため、成年後見制度の利用者も遺言に関しては、後見人らの判断を仰ぐことなく決定することが可能です。
「意思能力」は必要
ただし、未成年であれ被後見人であれ、もっと言えば一般的な成人であっても、「意思能力」の欠如した決定は無効です。
意思能力は中々解釈が難しい部分もありますが、常に一定の状態にあるとは限らないと解されています。
つまり、被後見人が一時的に判断能力が回復することもあれば、普通の成人であっても泥酔状態であれば、判断能力が欠如したものと解されています。
つまり、「被後見人だから」、「認知症だから」と意思能力や判断能力が無いとは言い切れず、遺言を残せる時もあるという話です。
公正証書による遺言
民法973条では、医師2名の立ち合いの下であれば、成年被後見人であっても遺言を残せるものと規定しています。
また、公正証書遺言であればその場に証人2名が立ち会うことになるため、より有効性と信頼性の高い遺言をのこすことが可能です。
判断能力が疑われる人物の遺言に関しては、法定の場でもしばしばその有効性が問われます。
万が一の状況に備えて遺言の正当性を確保するための判断は、やはり必要な行為だと言えるでしょう。
ご自身やご家族がこうした手続きを行うことが難しい場合は、相続に強い専門機関への相談も1つの手です。