兄弟姉妹は遺留分制度の適用外!その理由を徹底解説
遺留分は、遺言による遺贈や贈与契約によっても侵害することができない、法定相続人に保障された権利です。ところが、遺留分は「配偶者及び子・直系尊属」にのみ認められており、兄弟姉妹には認められていません。
今回は、遺留分制度の趣旨を解き明かした上で、兄弟姉妹に認められない理由を説明しようと思います。
遺留分は法定相続人に平等に与えられるワケではなく、その関係性によって変動します。具体的には「配偶者・子・直系尊属」にのみ与えられるため、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。
また、それぞれの遺留分比率も異なります。
〇 配偶者 → 法定相続分の1/2
〇 子 → 法定相続分の1/2
〇 直系尊属 → 法定相続分の1/3
〇 兄弟姉妹 → なし
このように、遺留分は法定相続比率とは別の取扱いが為されています。
上記図表で注目して欲しいのは今回のテーマである「兄弟姉妹」。遺留分はゼロと記載されていますよね。
「兄弟姉妹だけ著しく不利な扱いをされている」と感じた方も多いのではないでしょうか。
そもそも遺留分ってどうしてあるの?
そもそも遺留分は、遺言により第三者に全額の資産が遺された場合などにおいて、「家族の生活を保護する」という趣旨のために作られた強行規定です。
そのため、通常被相続人に依存して生活している「配偶者や子」については特に強い遺留分を認める必要があります。
お父さんが妻そっちのけで愛人に入れあげて、遺産を全額渡してしまった場合を想像すると、イメージしやすいのではないでしょうか。また、直系尊属であるおじいちゃんやおばあちゃんも、場合によっては困るかもしれませんよね。
兄弟姉妹に遺留分がない理由
ところが、兄弟姉妹はどうでしょう。兄弟姉妹は通常は被相続人とさほど年齢が変わらず、経済的にも自立しているもの。資金的に援助を必要としている状況にはありません。
そして、先ほどご説明した通り、本来の遺留分の趣旨は「遺された家族の生活を保障する」ため。兄弟姉妹において、その必要性が認められないのは自明の理です。
結論として、兄弟姉妹に遺留分が認められない理由は、「遺留分の趣旨の対象外にあるから」。ここまで読み進んだ方の多くも、ご理解いただけるのではないでしょうか。
複雑な趣旨の遺留分
遺留分は制度的にはそう複雑ではありませんが、趣旨がわかりにくく、深く考えなければ理解できない部分もあります。
ですが、丁寧にその理由を探って行くにつれ、よく考えられた制度だと感じてしまうはず。相続における不公平感を軽減する役割を果たしています。
ところが最近は高齢化社会の影響もあり、「子に遺留分を認める必要はない」との意見も見られます。この点については今後も議論が進むものと考えられており、今後の展開に注目が集まっている論点です。