相続における“寄与分”について徹底的に解説します!
被相続人が亡くなった場合、相続人は民法にしたがって法定相続分を受け取るのが一般的です。
ただ相続人が“寄与分”を主張して認められた場合、その相続人はさらに多くの財産を受け取れる可能性があります。
したがって今回は、相続における寄与分について、さまざまなことを解説したいと思います。
相続における“寄与分”の概要
相続における寄与分とは、複数の相続人のうち、被相続人の財産の維持や増加に関する貢献をした人物に対して、法定相続分以上の財産を受け取らせる制度のことを言います。
では、“被相続人の財産の維持や増加に関する貢献”には、一体どんなことが当てはまるのかを見ていきましょう。
• 事業従事
被相続人が営んでいた事業に対して、報酬がない状態またはそれに近い状態で従事し、労務の提供、財産の維持・増加という形で貢献することです。
• 財産出資
被相続人、または被相続人が営んでいた事業に対して、財産上の給付や利益を提供し、財産の維持、増加という形で貢献することです。
また、債務を返済するなどして、被相続人の財産の維持に貢献することも該当します。
• 療養看護
被相続人の療養看護を報酬がない状態で行い、医療費または看護費などの支出を回避することによって、財産の維持に貢献することです。
• 財産管理
被相続人の財産を管理し、被相続人が管理するための費用の支出を回避することなどによって、財産の維持に貢献することです。
相続における寄与分の主張はどうすれば認められるのか?
相続人が寄与分を主張したい場合、どんな要件をクリアすれば、主張が認められるのでしょうか?
クリアすべき要件は以下の通りです。
• 主張する相続人の貢献があること
• 貢献したことに対して相当の対価を受け取っていないこと
• 財産の維持、増加に関係する貢献であること
• 相続が始まる前までの貢献であること
• 特別の寄与であること
特別の寄与とは、被相続人と相続人の間で通常行われることが期待される範囲を超えた寄与(貢献)のことを言います。
例えば、相続人が被相続人の入院時に同行すること、または被相続人の事業に関する簡単な手伝いをすることなどは、“通常行われることが期待される範囲を超えた寄与”とは言えないため、特別の寄与には当てはまりません。
ただ10年以上など、長い期間に渡って被相続人の事業をサポートし続けた場合、または生活のサポートをし続けた場合などは、特別の寄与として認められることがあります。
相続における寄与分を主張する際の大まかな流れ
相続における寄与分は、まず遺産分割協議書の作成時に主張します。
このとき寄与分を主張する相続人は、寄与分があることの主張だけでなく、どのような貢献なのか、どれくらいの金額なのかということを他の相続人に説明しなければいけません。
ただ遺産分割協議で他の相続人が納得してくれない場合は、調停に移行し、家庭裁判所を介して寄与分を主張することになります。
調停を行えば、主張する寄与分の金額すべてを受け取ることができなくても、相続人同士の譲歩で少しは寄与分を受け取れる可能性が高くなります。
ただ調停をしても他の相続人が認めてくれない場合、審判によって寄与分の申し立てをするという流れになります。
裁判所によって、寄与分を主張する理由がすべて正当であると認められた場合、その相続人は希望通りの寄与分を受け取ることができます。
まとめ
相続における寄与分にはさまざまな種類があり、認められるためにクリアしなければいけない要件も数多くあります。
相続において、少しでも多くの財産を受け取りたいという気持ちはわかりますが、被相続人への些細なサポートであれば、寄与分の主張は通らないことが多いです。
またむやみに寄与分を主張すると、他の相続人との関係が悪化してしまうことにも繋がるので注意しましょう。